About the Birth Story of KitKat’s “Surely a Page of Youth”
2024年8月からスタートしている、ネスレ日本さん(KitKat)との取り組みである、
「きっと青春の1ページ」という日本で初めての“SNS発ブランドIP”の誕生秘話について。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000100857.html
「きっと青春の1ページ」とは、部活動や受験に懸ける高校生の甘くて苦い青春を描いた、ショートドラマシリーズ「キットカット」のSNSアカウントです。
「キットカット」のブランドメッセージを軸に、青春を送る世代のリアルな感情に寄り添ったコンテンツ発信を続け、2024年8月に運用を開始してから、累計再生回数は約2.5億回を記録しています。
TIkTokアカウント:https://www.tiktok.com/@kitkat_juken_
今回このコラムを通じて「きっと青春の1ページ」誕生から
Z世代から支持される”ブランドIP”にまで成長した過程をお話ししたいと思います。
1. そもそも”SNS発ブランドIP”って何?
まずは、僕が先ほどから言っている「”SNS発ブランドIP”って何?」
と疑問に思っている方もいると思います。
「ブランドIP=ブランドを象徴するキャラクターや枠組み」と考えると、
auの「三太郎」やソフトバンクの「白戸家」なんかが分かりやすい例かと思います。

従来のCM発のIPは、基本的に「キャラクターがCMで認知される」という仕組みですが、CMは“瞬間最大風速”で広く届けるのは得意でも、ユーザーとの距離が遠いためインタラクティブなコミュニケーションが生まれにくいのが欠点です。
一方、SNS発ブランドIPは、インタラクティブなコミュニケーションが生まれやすいSNSの特性を活かして、一方的に情報を伝えるのではなく、ユーザーとの接点を“ストック型”にしていけるため、ファンの質が高いIPを育てることができるのが最大の違いです。
また、トレンドに沿った鮮度の高いコンテンツを作れたり、数も多く打てるのが強みです。

CM発ブランドIP=幅広い認知は獲得できるが、キャラクターやブランド名認知がメイン、熱量の高いファンが少ない。
SNS発ブランドIP=幅広い認知獲得は難しいが、ブランドのメッセージやストーリー理解度が高く、熱量の高いファンが多い。
CMはどうしても憧れを作るもののため、視聴者は“遠い存在”として受け止めがちで、基本的には一度放映して終わりになりがちです。
例えばCMの場合、芸能人を中心とした有名なキャストが出演しており、そのキャストにファンがついていることがほとんどです。そのため、キャストが固定されて継続的に露出しなければ、視聴者の記憶に残りにくく、やがて忘れられてしまいます。
一方、SNS発のIPではキャスト個人ではなく、IPのストーリーやコンセプトそのものにファンがつくため、登場人物が変わっても問題なく続けられます。
また、キャラクターたちの物語や世界観を通じて、視聴者自身の体験として共感してもらえる点が大きな違いです。
2. 今回なぜ、ブランドIPという戦略をとったのか
実は、最初から「SNSでブランドIPを作りましょう」と提案したわけではありませんでした。
今回、KitKatの担当者村岡さんから提示されたのは、「Z世代に届くコミュニケーションをしてほしい」という与件でした。
SNSマーケティングをしている中で、Z世代へのコミュニケーションに課題を抱えている企業の悩みは非常によく聞きます。

マーケティング部長 村岡慎太郎様
従来のテレビCMでは届きにくいし、Z世代は広告を見抜いて距離を置くことも多い。
だからこそ公式アカウントからの発信ではなく「自然と近づける形が必要だ」と感じたんです。
最初は“受験応援”をテーマにしたショートドラマを複数制作する予定でしたが、単発ではなく物語をアカウントとして独立させ、ユーザーと一緒に育てていける形にした方が絶対に強いと確信しました。
そこで、学生との距離をぐっと近づけるためには”共感を生む”ことが必要だと思い、受験生の気持ちの変化にフォーカスしました。
7月、8月、9月…と時間経過で変わる心境をダイレクトに伝えられるコ
ミュニケーションにしたいと考えて、
結果として「きっと青春の1ページ」という形になりました。
この戦略は担当の村岡さんにもすごく共感していただけて、KitKatでもこれまでにやったことのない取り組みでしたが、一緒にチャレンジすることをその場で決めてくれ他のが印象的でした。

3. 「きっと青春の1ページ」をIPとしてどう育てていったか
方向性も決まり、アカウントを立ち上げて運用開始したのですが
最初の1ヶ月は正直全然伸びなくて、、(苦笑)
ネスレ担当の村岡さんには僕、始まる前に「100万回再生とか余裕でいきますけどね」と伝えていた一方で、最初は本当3万回再生とかで、これは本気でやばいなってかなり焦りました。
そこから1ヶ月間、必死になって死ぬほどPDCAを回してコンテンツをブラッシュアップ。

構成は何度も修正しました。
いま上がっている「1本目」の動画も、実は4回ぐらいアップし直しています。
ユーザーが離脱するポイントを徹底的に分析して、どうしたら1.5秒、3秒、5秒の壁を超えて視聴を継続してもらえるか?という点を意識して、最初のワンシーンだけで何パターンも撮影しました。最初のつかみで感情を動かせるよう、冒頭に“喜怒哀楽”の動作やパンチラインを必ず入れることも意識しました。
また、TVドラマのようなクオリティだと、SNSの場合再生も伸びないし反響も生まれにくいです。あえて“綺麗にまとめすぎない”、ツッコミどころや引っかかりを残す構成にして、コメントが自然に生まれるような余白を散りばめています。
たとえば、「登場人物の動きにクセをつける」とか「背景に毎回登場するあの小道具」とか、いわゆる“隠れミッキー”的な仕掛けも入れています。

カメラワークもゼロから見直しました。
「イマジナリーナイン(カメラ位置の基本ルール)」を忠実に守るところから始めて、カット割も増やし、テンポを早くしました。編集の際にも視聴者が離脱しないよう、飽きない構成を意識しています。
あとは、もうカメラ自体を変更したりもしました(笑)。

音楽も非常に重要で、TikTokで1,000再生以上ついているトレンド音源をチェックして、使用する曲は必ず“セリフの有無に合わせて強弱”をつけて調整。
音量も、あえて大きめに設定することで、視覚だけでなく聴覚でも引き込むようにしています。
このように”見てもらえる”コンテンツ作りを徹底し、さらに「きっと青春の1ページ」をIPとしてどう目立たせるか考えた時に、とにかく発信の“量”と“コミュニケーションの深さ”に注力しました。
限られた予算の中で、いかに量を出してユーザーと深いコミュニケーションを取れるかが重要だと感じました。

視認性の観点では、制服というアイコニックなアイテムを設定しました。
ビジュアルとして分かりやすく、見るだけで「きっと青春の1ページ」だと分かるものがあると強いなと思い、「KK学園」のエンブレムと、チョコレート色のブレザーがIPを象徴する要素の一つにもなったなと感じてます。
また、演者さんは毎回変わるので、現場では彼らが緊張せずリラックスした雰囲気でいられるような空気作りにも気を使いました。

楽屋にキットカットを置いたり、撮影しやすい小道具を準備することで
「好きに撮ってSNSに上げていいですよ」と伝えて、
彼らが自分のアカウントからも発信してくれる流れを作りました。
学生役の彼らにとって、教室や制服といったアイテムはとても小さな道具ですが、それがあるだけで画になるシーンを作ることができるので
「自分のアカウントでも撮ろう」と思ってくれます。
なので裏側では、彼らが休憩中にダンス動画を撮ってくれたり、楽屋でのオフショットを撮ったりするなど、本編以外のコンテンツもどんどん増えていきました。

画像右:黒江こはるさんのTikTokアカウントでの投稿:約8,000回いいね
こうした“ちょっとした仕掛け”を積み重ねることで「自然に広がる動線」を作って、コンテンツの総量を増やしつつ、演者さんのファンも巻き込んで深いエンゲージメントを獲得し、自然にIPが育っていきました。
4. 単なるバズではない、IPとして成長しファンを獲得したことで大きな資産に
本当に色々試行錯誤して、2〜3ヶ月目くらいから50万〜100万回、
200万〜300万と一気に再生数を伸ばすことができました。
ショートドラマの平均再生数は200万回、視聴時間は60秒と90秒動画で30秒以上。
200万回再生のうち、フル視聴率30%だったので、約20万〜50万人が最後まで見てくれている計算になります。

こうして“1回の視聴の濃度”を高められたことが、最終的な認知の強さにつながったんだと思います。
SNSの動画はバズって一時的に何百万回再生されても、“点”で終わってしまいがちで、「何の企業の動画だったっけ?」と忘れられてしまうことも多いと思います。
でもIPとして物語を持つことで、ユーザーの心に“線”として残るし、「応援する気持ち」や「青春の一瞬を切り取る」というブランドメッセージが 長期的にファンの中に積み重なっていきます。
「きっと青春の1ページ」で投稿したコンテンツの反応で特に印象的だったのは、演者さんへの「かわいい」「かっこいい」といったコメントよりも、物語自体に対してコメント人が多かったことです。

共感を生んで物語のファンになってもらうことができたので、まさに狙い通りのIPに育ったと感じています。
今回KitKatさんが伝えたかったテーマは「受験や部活を頑張る若者を応援する気持ち」です。
「みんなに金メダルを」という想いを物語として形にして、 SNSで誰もが共感できるIPに落とし込み、成長させることができたのが、このプロジェクトの一番の価値だと思っています。

5. SNS発ブランドIPがもたらすメリット
SNS発のブランドIPを育てる最大の価値は、
一過性で終わらない“ストック資産”を自前で持てるところです。
これまでは、 CMを作って放映して、小売のバイヤーに「テレビでCMを流してます」と言って棚に置いてもらう――それが当たり前でした。
でもそれって、自分たちの手元には何も残らない。
広告を止めた瞬間に認知も止まってしまうし、CMはブラックボックスのようなもので、効果が見えにくい部分も多い。
一方、SNSでIPを育てれば、自分たちの資産として“コミュニティ”や“接点”を持ち続けられるし、アカウント自体がメディアになっているので、どんどんストックされていく。
しかも、ユーザーからのコメントやシェアでコミュニケーションがどんどん広がります。
こうした「深いエンゲージメント」と「持続的な拡散力」が、SNS発ブランドIPの大きな武器です。
IPとして成長すれば、新しい商品やキャンペーンを打ち出すときに、
いつでもそこに投げ込める“自前の武器”になるので、
映画化や書籍化、ゲーム化など、 TikTok発のIPが、将来何十億円規模の興行収入を生む可能性も十分にあると思っています。
最近映画化した「変な家」は、元々You Tubeの人気ホラーコンテンツだったので、SNSのコンテンツが映画化まで発展したしたいい事例です。

これは、企業公式アカウントの単純なキャンペーン運用では絶対にできなかったことで、IPとして独立して存在しているからこそ、ファンがストーリーに没入できるし、そこにブランドメッセージを自然にのせることができます。
今回の「きっと青春の1ページ」も、TikTokで生まれたIPとして、
TVCMまで展開できたのはおそらく国内でもほとんど前例がありません。
さらに、今後は店舗イベントや新商品のコラボなど、リアルの接点に広げていける。これは従来の一発限りの広告では作れなかった資産だと感じています。
SNS発ブランドIPはまだどこも本格的に参入していない領域ですが、基本的にほとんどの業種で可能だと思っています。
その中でも、消費者が選ぶ理由が感覚に寄りやすい業界――お菓子、飲料、アパレル、スポーツブランドなどは相性が良いと感じてます。
IPは“自社のコミュニケーション手段”なので、BtoCであれば商品やブランドのファン化に使えますし、BtoBなら例えば採用活動や企業ブランディングにも活用できます。
それぞれの課題に応じて、最適な形で育てていくことができるため、
SNS発ブランドIPが、今後ブランドのSNS戦略で重要になっていくと感じています。
僕がOASIZを創設してからSNS発のブランドIPを作るのは今回が初めて
でしたが、0から作り上げて、一番クライアントに喜んでもらえたのが
今回の「きっと青春の1ページ」でした。
単なるプロモーションではなく、
クライアントの課題に対して明確なソリューションを提示し、さらに“資産性”のあるメディアとして残せたことが、成功に繋がったと思います。
今回「きっと青春の1ページ」の誕生秘話を通じて、SNS発のブランドIPについて色々とお話しをさせていただきましたが、市場としてはまだまだ始まったばかりです。
SNS発ブランドIPについて気になる企業のマーケターの方、チームとして一緒に働きたい方はぜひご連絡ください!